生活の疑問

なんで 50音って言うの?

なんで 50音って言うの?

小さい頃から当たり前のように使っている「あいうえお」の表。
ふと「なんで 50音って言うんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。
実際に表の文字を一つずつ数えてみると、マスが空いていたり、「い」や「え」がダブっていたり、最後にはみ出すように「ん」があったりと、ぴったり50個ではないですよね。
お子さんに「本当は50個ないのに、なんで?」と聞かれて、答えに詰まってしまった経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。
最近では、国立国語研究所などの専門機関が解説記事を公開したり、教養系のWebメディアでも「48音なのになぜ五十音?」というテーマが取り上げられたりと、密かなトレンドにもなっているんですよ。

この記事では、そんな誰かに話したくなる五十音の秘密について、やさしくひも解いていきます。
最後までお読みいただければ、普段何気なく使っている日本語が、もっと愛おしく、奥深いものに感じられるようになりますよ。
ぜひ、私たちと一緒に言葉の歴史の旅に出かけてみましょう。

実は作られた当時はぴったり50個だったから

実は作られた当時はぴったり50個だったから

私たちが普段使っている五十音図ですが、現代の仮名で数えてみると「ん」を含めても48音ほどしかなく、実はぴったり50個ではないんですよね。
それなのに「なんで 50音?」と呼ばれ続けているのかというと、その答えはとってもシンプルなんです。
実は、平安時代から少しずつ作られてきた表の原型をもとに、江戸時代になって本当にぴったり50個の音を並べた表が完成したからなんですね。
江戸時代の国学者である契沖(けいちゅう)という人物が、1693年の著書の中で、母音の5つと子音の10種類を掛け合わせたきれいに50マスの表をまとめました。
もともとは「五音図」などと呼ばれていたのですが、この時に初めて文献に「五十音図」という名前が登場し、理想的な日本語のフルセットとして定着したのです。

しかし、長い長い時間が経つにつれて、日本人の発音の仕方が少しずつ変わり、使われなくなって消えてしまった音が出てきました。
中身の音は減ってしまったけれど、日常生活の中で「五十音」という伝統的な名前だけがそのまま残ったと言われています。
名前の中に数百年前、あるいは千年以上前のルールが生き続けているなんて、なんだか歴史のロマンを感じませんか。

日本語の音が変化していった壮大な背景

日本語の音が変化していった壮大な背景

では、そもそも誰がどのような目的で、この50マスの表の原型を作ったのでしょうか。
そこには、昔の人々の知恵と工夫がいっぱい詰まっているんですよ。

お坊さんたちが勉強のために作った便利な表

この表のルーツを探っていくと、平安時代の明覚(みょうがく)という学僧(お坊さん)をはじめとした、当時の知識人たちにたどり着くと言われています。
当時のお坊さんたちは、仏教のお経の正しい発音や、中国から伝わってきた難しい漢字の読み方を学ぶ必要がありました。
そこで、遠くインドのサンスクリット語(悉曇(しったん)という言葉です)の配列と、中国の「反切(はんせつ)」という発音の仕組みを参考にしたのです。
中国の反切には「漢字を子音と母音に分解して表す」という画期的な発想がありました。

この国際的で最先端な知識を掛け合わせた結果、母音(あいうえお)と子音(あかさたな…)をマトリクス状に掛け合わせた体系的な表が誕生しました。
これが、今の五十音図の原型(当時は「五音図」などと呼ばれていました)になったとされています。
お坊さんたちの「なんとか分かりやすく整理したい」という熱意が、今の私たちにつながっていると思うと、とっても感慨深いですよね。

「あいうえお」の順番はインドから来た?

最近のクイズ番組や教養サイトでもよく話題になりますが、「あいうえお」や「あかさたな」という順番は適当に決められたわけではありません。
実はこの並び順、古代インドのサンスクリット語(梵字)の配列ルールをそのまま参考にしているんです。
サンスクリット語でも、母音が「あいうえお」のような順序で、子音が「あかさたなはまやらわ」に近い順番で整理されていました。
遠く離れたインドの言葉の並びが、日本の五十音図にそのまま生きているなんて、壮大な歴史を感じますよね。

時代の流れとともに消えてしまった音たち

きれいな50マスの表ができたものの、言葉は生き物なので、時代とともにどんどん変化していきます。
昔の人たちが使っていた言葉と、私たちが今話している言葉は、やはり少し違うんですよね。
昔は「や行のい」や「わ行のう」など、今はない特別な発音が存在していたとされています。
ところが、人々の暮らしの中で、発音しにくい音や、他と似ている音が、次第にひとつにまとまっていきました。

その結果、表の中に空白のマスや、発音が同じになってしまった重複マスができてしまい、今の「50個じゃない」状態になってしまったんですね。
言葉がスリムになっていく過程が、そのまま表に残されているわけです。

五十音図に隠された3つの不思議なポイント

ここからは、私たちがよく知っている表を思い浮かべながら、実際にどうして音が減ってしまったのか、具体的な不思議ポイントを3つご紹介しますね。
これを知っていると、次に表を見るのが少し楽しくなるかもしれませんよ。

ダブって入り込んでいる「い」と「え」

五十音図をじっくり見てみると、「や行」や「わ行」の中に、「あ行」と同じ「い」や「え」が入り込んでいますよね。
「あれ、ここ同じ文字が入ってる?」と気づいたことがある方も多いのではないでしょうか。
実はこれ、昔はきちんと別の発音を持っていたものが、長い歴史の中で「い」や「え」と同じ音に統合されてしまったからなんです。
音は同じになってしまったのに、表の枠組みだけは昔のまま残っているので、なんだか不思議なダブりが生まれているんですよ。
昔の人が一生懸命作った枠組みを、私たちがそのまま大事に使っている証拠ですね。

昔はもっと活躍していた「ゐ」と「ゑ」

歴史的仮名遣いという言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。
昔の五十音図には「わ行」のところに、「ゐ(うぃ)」や「ゑ(うぇ)」という独立した文字がしっかり並んでいました。
これらも昔は日常的によく使われており、立派な五十音のメンバーとして活躍していたんです。
しかし、現代の日本語では発音が「い」や「え」に吸収されてしまい、普段の生活ではほとんど使われなくなってしまいました。
そのため、今の標準的な表で数えると、これらの音が除外されてしまい、全体の数が減ってしまっているんですね。

あとから仲間入りした特別ゲストの「ん」

私たちが毎日のように使っている「ん」ですが、実は平安時代の最初の表には含まれていなかったとされています。
「ん」が一つの文字として独立して書かれるようになったのは、平安時代の後期になってからなんですね。
もともとの「母音と子音の組み合わせ」というルールには当てはまらない音なので、昔の表には居場所がありませんでした。

その後、近代になって学校での国語教育が広まる中で、子どもたちに教えやすいように表の最後に「ん」が付け足されたと言われています。
つまり「ん」は、五十音の本来の枠組みの外からやってきた、後輩の「特別ゲスト」みたいな存在なんですよ。

身近なところで日本語の歴史を感じてみよう

「なんで 50音?」の秘密を知ると、普段何気なく使っている言葉が少し違って見えてきませんか。
せっかくなので、身近なところで日本語の歴史を感じてみるための、ちょっとした楽しい行動をご提案しますね。
今日からすぐにできることばかりなので、ぜひ試してみてください。

  • 古い五十音図(五音図)をインターネットで画像検索して、昔の並びを眺めてみる
  • 「ヱビスビール」や「ニッカヰスキー」など、商品名や看板に残っている昔の文字を探してみる
  • 紙の国語辞典を開いて、「ゐ」や「ゑ」がどの位置に載っているか観察してみる

どれも、ちょっと意識を向けるだけでできることですよね。
とくに、街中でお買い物をしているときに「あ、昔の文字だ!」と見つけると、なんだか宝探しみたいでワクワクしますよ
お子さんやご友人にも、「この文字、実は昔の50音のメンバーなんだよ」と教えてあげると、きっと驚かれると思います。

言葉の歴史がギュッと詰まった大切な名前

今回は、現代では48音ほどしかないのに「なんで 50音」と呼ばれているのか、その秘密についてお話ししてきました。
平安時代にお坊さんたちが考案したマトリクス状の表をベースに、江戸時代になってぴったり50個の音で構成された表が完成したことが名前の始まりでしたよね。
そして、言葉が変化して音が消えたり、後から「ん」が追加されたりしても、「五十音」という名前だけが日常語として大切に受け継がれてきたことがわかりました。
一つ一つの文字の裏側に、インドや中国の知恵、そして千年以上もの日本の歴史が隠れているなんて、本当に素敵なエピソードだと思いませんか。
私たちが普段使っている言葉は、ご先祖様たちから受け継いできた大切な宝物なんですね。

日常の小さな疑問の種を大切に育てよう

毎日当たり前のように使っていて、疑問にすら思わないことの中にも、実は深い歴史や面白い理由がたくさん隠れています。
あなたも今回のように「これってなんでだろう?」と不思議に思った時は、ぜひその気持ちを大切にしてみてくださいね。
ほんの少し立ち止まって調べてみるだけで、いつもの景色がもっとワクワクするものに変わるはずですよ。
これからも、日々の小さな疑問を楽しみながら、言葉の面白さを一緒に味わっていきましょうね。
今日からあなたの周りにある「あいうえお」が、少しだけ輝いて見えますように。